最先端の料理人が描く“懐かしの味”――CAINOYA塩澤隆由氏が六本木「ウブ」で披露した、ウブな一皿

六本木の「ウブ」は、子どもの頃の“懐かしい”とラグジュアリーワインを提供するノスタルジック・ガストロノミーです。運営は株式会社はらぺこ(東京都港区/代表取締役CEO 見冨右衛門)。同店では、第一線で活躍する料理人をゲストに招くシリーズイベント「一流料理人の、ウブな一皿。」を開催しています。テーマは、誰もが記憶に残している“あの一皿”です。
シリーズ第三弾のゲストは、京都・御室のレストラン「CAINOYA」でオーナーシェフを務める塩澤隆由(しおざわ たかよし)氏です。塩澤氏は1972年鹿児島県生まれで、料理はほぼ独学で身につけました。『NOT THE SAME』を信念とし、最新機器による緻密な温度管理から熾火までを自在に使いこなします。そんな最先端の料理人が手がける“ノスタルジック”とはどのようなものなのか。最先端とノスタルジーのギャップそのものが、この夜の最大の見どころとなりました。

見た目はレタスだけ。それでも一皿の料理になる
コースは「クリスタルサラダ」から始まりました。フリルレタスをサラダウォーターと一緒にガストロバックにかけ、真空の力で葉の内部まで味を含ませた一品です。ドレッシングを上から“かける”のではなく、レタスそのものに味を抱かせるという発想で、パリッとした瑞々しい食感はそのまま、噛んだ瞬間に内側から味があふれ出します。見た目はレタスだけなのに、一皿の料理としてしっかり成立しており、一品目から塩澤氏らしさが存分に表れた幕開けとなりました。
2皿目の「ヴィシソワーズ」は、おなじみの料理をいったん分解して組み立て直したものです。滑らかなスープ、ジェラート、胡椒の泡と、それぞれを異なる状態で表現しています。ジャガイモの甘味とコク、ジェラートの冷たさ、胡椒の刺激が口の中で重なり、最後にひとつのヴィシソワーズとして完成します。知っている味でありながら、体験としてはまったく新しい一品でした。

ミックスフライ、しゃぶしゃぶ、ちらし寿司。懐かしい料理を最新技術が支える
「GVPミックスフライ」は、伊勢海老、タラバ蟹のクリームコロッケ、鰆を盛り合わせた“夢の三点盛り”です。ここでもガストロバックが使われ、ミックスフライという最高にノスタルジックな料理の裏側で、現代的な調理機器が活躍しました。伊勢海老の甘味、タラバ蟹の濃厚なコク、鰆のふっくらとした身に、ねぶた漬けと林檎を合わせたタルタルソースを添えています。旨味と塩味、甘酸っぱさが揚げ物を軽快に食べ進めさせる、子どもの頃に夢見たミックスフライを大人が本気で作るとこうなる、という答えを示す一皿でした。続く「幸福豚のしゃぶしゃぶ」では、幸福豚と茸を海水でしゃぶしゃぶに。海水の塩味とミネラル感が豚の脂の甘味を引き立て、そこにポン酢と柚子七味が添えられます。誰もが知る料理だからこそ、素材の力と火入れの精度がストレートに伝わる一品です。
「大人の小僧SUSHI」は、CAINOYAから持ち込んだ八寸器に仕立てたバラちらしです。使われている魚は、日々の料理で出る端の部分を捨てずに急速冷凍し、少しずつストックしてきたもの。さらにシャリまで急速冷凍することで、美味しさを保ったまま一皿に蘇らせています。端材を“余り物”で終わらせずにごちそうへと変える、フードロスへのひとつの答えを最新の冷凍技術が支えている点も塩澤氏ならでは。食材も技術も進化した大人の一皿でありながら、蓋を開けた瞬間のワクワクは子どもの頃のままでした。

イタリア料理人の矜持で仕上げたナポリタンとティラミス
「焼きたてハンバーグとナポリタンのラグー」は、ナポリタンをイタリア料理人の視点から再構築した一皿です。ソースは「アマトリチャーナ」がベース。ナポリタンでおなじみのピーマンは万願寺唐辛子に、マッシュルームはポルチーニにアップグレードされています。ハンバーグも合い挽きではなくサルシッチャを仕込み、スパイスを効かせました。日本生まれの洋食を、イタリア料理人としての矜持を込めて徹底的にアップデートしながらも、食べればちゃんとナポリタン。その見事な着地に、会場からは感嘆の声が上がりました。
締めくくりは「喜界島産黒糖のティラミス」です。黒糖ジェラートにティラミスを重ね、さらに黒糖をまとわせてバーナーでカラメリゼ。焦げた黒糖の香ばしさとほろ苦さから、黒糖特有の深い甘味へとつながっていきます。そこにフルーツの酸味とメレンゲの軽さが加わり、濃厚な味わいを軽やかにまとめます。イタリア料理人としてのルーツを感じさせるティラミスで幕を閉じるところにも、最後まで塩澤氏らしさが貫かれていました。
塩澤氏が描いた“ノスタルジック”は、懐かしい料理をそのまま再現するものではありませんでした。ガストロバックや急速冷凍といった現代の技術を駆使し、ときに料理を分解し、ときに食材をアップグレードしながら、あの頃の「美味しい」を今の料理へと更新していく。新しいのに懐かしく、最先端なのにウブ。そのギャップが、この夜にしか味わえない体験となりました。子どもの頃のワクワクは、料理人の技術と経験によってまだまだ進化できる、と確信させる一夜だったといいます。
シリーズ「一流料理人の、ウブな一皿。」は今後も、さまざまなジャンルの名店シェフをゲストに迎えて継続的に展開される予定です。料理人の背景やストーリーを一皿の料理を通じてひもとく試みとして続いていきます。
- 企画名:CAINOYA × ウブ コラボレーション「一流料理人の、ウブな一皿。」第三弾
- 会場:六本木「ウブ」
- 第三弾ゲストシェフ:CAINOYA 塩澤隆由氏
- 開催日:2026年9月17日(木)※2部制・カウンター10席限定(各部)
- 店名:ウブ
- 住所:東京都港区六本木7-5-11 カサグランデミワ2F
- 営業時間:月・火・水・木・金・祝日・祝前日・祝後日 18:00 – 01:00/土・日 18:00 – 22:00(L.O. 料理21:00 ドリンク21:30)※土日は時短営業&アラカルト縮小メニューのみ
- 定休日:不定休
- 座席数:10席
- インスタグラム:@ubu_roppongi
- 予約:OMAKASE、食べログ
出典:株式会社はらぺこ






